2011年8月28日日曜日

名前をうばわれたなかまたち ちいさな死神くん


【今日の本】
「名前をうばわれた なかまたち」タシエス:著 横湯園子:訳 さらえ書房:刊
 題名から想像できるように「いじめ」をテーマにした絵本である。ボクは、ボクの名前で呼ばれない。挿絵のなかまたちには顔はなく、すべてりんご?になっている。先生も。みんな意思のない人間として描かれている?
 勉強ができるから「ガリ勉」、やり返さないから「弱虫」・・・・、いじめるみんなは、それはボクの思い込み、ひがんだ見方だという。(なぜか更衣室でこう説明する場面だけ顔が出ている。)なぜか、ボクの顔を出てきて、笑っている。思いつめたボクは、鏡にうつった自分の顔を見て、階段をのぼり手すりからのりだす。自殺をしようとするのだ。しかし、最後のページをめくると、笑った顔が出てくる。最後のページは、こう結んでいる。
 「ボクに何が起きていたのか ずっと気にかけていてくれたあなた
  鳥だけが飛ぶことができるのだと ちゃんと知っていたんだね
  思い出させてくれて ありがとう 
  あなたの本当の名前は?」
 自殺を思いとどめさせたものは何だったのでしょう。ボクのことを心配していてくれた誰か?内なる声?神様?いずれにしても、最後の最後で自分の尊さを取り戻すことができたわけです。いじめで死んでしまった子どもたちにも、このように自分を取り戻すきっかけがあればなあと思います。

「ちいさな死神くん」キティ・クローザー:著 ときありえ:訳 講談社:刊
 死神は死の王国の入り口まで連れて行くのですね。これはどうでもいいことですが。ある日、エルスウィーズを迎えにいくと、いつも違い、彼女は笑っています。そんなことは、死神くんにとってはじめての経験でした。当然のことながら、いつもは、こわがられてばかりですから。そして、自分も子どもであることを思いだし、2人は楽しく遊びます。そして、死の王国から別の国に旅立たなければならない日がやってきます。(つまり、ここで天国と地獄に分かれるということかなあ。)悲しんでいる死神くんのところに、天使になったエルスウィーズが姿をあらわします。そして、それからは、2人で死にゆく人を迎えに行くのです。こうすると、死ぬのが怖くなくなるのです。死神は本当は死ぬことは怖くないんだと思ってほしかったのでしょうか。

 余談ですが、死ぬ話といえば、今日も「最後の忠臣蔵」をみてしまいました。花嫁行列から最後に孫左?が切腹するまでのところは、何回みても泣いてしまう。たぶん何度みてもいいものはいいのです。

 絵本の中には、ビニルカバーがかけてあり中身が読めないものがある。こんなときにも、iPhoneが役に立つ。「ItemShelfLT」というソフトを使えば、絵本の裏表紙にあるバーコードを読み取り、検索すれば、アマゾンのホームページを表示することができ、うまくいくと書評を見ることができ、購入の参考にできる。なんと便利な世の中です。

2011年8月27日土曜日

スーザン・バーレイの絵本



【今日の本】スーザン・バーレイの絵本2冊
「アナグマさんのもちよりパーティー」ハーウィン・オラム:著 スーザン・バーレイ:絵 小川仁央:訳 評論社:刊 ※第2弾
「アナグマさんはごきげんななめ」ハ
ーウィン・オラム:著 スーザン・バーレイ:絵 小川
仁央:訳 評論社:刊 ※第3弾
 「わすれないおくりもの」に続く、シリーズ第2弾と第3弾。実は、スーザン・バーレイの絵本と思い込んでいましたが、スーザン・バーレイは絵をかいたのであって、作者は別の人でした。勘違いをしていました。今ごろ気づくのって、遅いですよね。
 内容ですが、もちよりパー
ティーの招待状が届いたのですが、モグラは、もっていくものが何もありません。そう話すと、アナグマは「それじゃあ、きみだけで、きてくれよ」といいます。でも、他の動物から「なにももってこないなんて、信じられない」といわれ、モグラはいじけて,かなしそうです。そんなモグラにアナグマはこう言います。「いつもどおりのきみ、いつものゆかいなきみ」のことだったんだ。これを聞いたモグラが、その場で新しいダンスをつくり踊り出すと、みんなおおよろこび。帰るとき、アナグマとモグラはだきあってよろこびます。
 また、「ごきげんななめ」では、いつもみんなを助け、はげましてくれるアナグマがつかれてうんざりしています。心配したモグラは、表彰式をすることを考え、アナグマを誘います。そして、表彰式の最後に「たくさんの栄誉をたたえて」アナグマを表彰します。アナグマは、自分がみんなからどんなに好かれているか、必要とされているかを知って、元気を取り戻します。そして、この表彰式を企画してくれたモグラに感謝し、また、二人はだきあいます。
 という、とてもあたたかいお話です。「わすれられないおくりもの」とあわせて3冊読むとあることに気づきます。というか、疑問が解決しました。というのは、「わすれられないおくりもの」の最後の場面にモグラが出てくるわけがわからなかったのですが、3冊読むと、この2人の関係がよくわかります。互いにとって互いがとても欠くことができない大切な友だちなのです。とても深い絆で結ばれているのでした。なるほどなあ。


2011年8月21日日曜日

教育の方法


【今日の本】「教育の方法」佐藤学:著 左右社:刊
 「放送大学叢書 011」叢叢と書いてあるということは、当然放送大学の講義に使われたテキストを本にしたということなのでしょうね。そう考えると、レベルの高い講義といえます。簡潔にまとめてある分、各自がさらにくわしく調べなさいということなのでしょう。
 簡潔にまとめてある部分から気になった文章を書き留めておきたい。

「学びの3つの次元の対話的実践」
  ①対象世界との対話的実践 ②教師や仲間との対話的実践 ③自分自身との対話的実践
  学びは、「世界づくり」と「仲間づくり」と「自分づくり」を三位一体で追求する対話的  実践である。
  「対話的コミュニケーションが成立している授業を参観すると、題材との対話、仲間との  対話、自分自身との対話という3つの対話的実践が組織されている。」

「発達の最近最近接領域」
  協同学習においては、多元的で重層的な発達の最近最近接領域を構成します。

「教室に生起するジレンマ」
  ①認知的・文化的領域のジレンマ ②対人的社会関係のジレンマ ③自己内的実在的ジレ  ンマ

「言語と学力」
  学力格差が拡大し固定する要因の一つとして、教室で規範化されている言語と子どもの日  常生活の言語との差異にあるあるのではないか。

「学びの共同体としての学校」
  子どもたちが学び育ち合う場であるだけでなく、教師たちが教育の専門家として学び育ち  合う場所であり、親や市民が教育活動に参加して学び育ち合う場所である。
  ①授業の改革 「作業活動」と「小グループの協同」と「表現の共有」の3つの要素があ   る。これらが定着した後は、すべての教室の机の配置をコの字かグループ別のテーブル   型へと変更し、聴き合い学び合う教室づくりへと進展する。
  ②同僚性の構築
   どの教室でも教師の声のテンションが下がって柔らかくなり、それと並行して生徒一人   一人が柔らかく真摯に学ぶ姿が見られるようになりました。
  ③親と市民の教育活動への参加

「課題と展望」
  ①より少なく学ぶことがより多く学ぶこと
  ②カリキュラムと組織の単純化
  ③小さな共同体で繊細な関係を基本とすること

「よい学校」
  よい学校とは、決して問題のない学校ではないはずです。よい学校とは、絶えず問題が子  どもと教師と親によって共有され、その解決に向かって協力し連帯し合っている学校だと  思います。

2011年8月20日土曜日

授業づくりをささえる

【今日の本】
「授業づくりをささえる ー指導主事として 校長としてー」石井順治:著 評論社:刊
 第13回授業づくり学級づくりセミナーの会場で購入した本、やっと読み終えました。石井先生が指導主事として、また、担任をはずれ研究会のリーダーや校長として、どのように現場の先生方とかかわっておられたのかなどをを知ることから。担任を離れた私(たち)がどのように先生方とかかわるとよいかということについてのヒントを与えていただけると思いながら読みました。そこで、印象に残ったことを書いておきます。
「授業を変えたいと言う教師は多い。けれどもそれには、子どもや教材のとらえ方、ひいては自らの生き方の転換までを必要とする営みとなる。それだからこそ、その営みに寄り添い、具体的に問題点を指摘し考え、その悶えの痛みを分かち合ってくれる仲間が必要なのだ。」大げさな感じもするが、実際にはそうなんだろう。こんな指摘も。「○○先生にとって、子どもの考えを信じてそれに寄り添ってともに作品を読もうとする立場に立てるようになったことが、言葉の柔らかさと子どもへの対応の温かさを生み出したのではないだろうか。」と。
 話は変わって、土佐いく子先生は、子ども観の転換を強く訴えられた。でも、よくわかってない方もいるようで、それは、生き方も転換する営みなのに、小手先の技術として片づけようとしているような感じがして、ゾッとしました。しかし、人のことは言わない、自分はどうかと問わなければ。


2011年8月18日木曜日

たんぽぽのこと


【今日の本】「たんぽぽのこと」竹内敏晴:文 長谷川集平:文・絵 温羅書房:刊

 小学校低学年向けの絵本?絵がとても素敵です。短い文と絵が想像力をかき立ててくれます。

「よしくんと話したのは きょうがはじめてです。」思い出しながら走るわたしのことがいろいろと想像できる絵です。いかにも絵本らしい。風にゆられて、あいさつするタンポポの場面もいいです。タンポポは朝はひらいていなくて、昼になるとひらくのですよね。それが、わたしにとってはものすごい発見でした。そのことをよしくんに教えてあげようと思いながら、走る絵もいいです。

 公園に着くと、よしくんがいじめられて泣いています。どんな風に声をかけようかと悩むわたし。だいぶたってから(多分夕方になって)、いった言葉がかわいい。「たなかさんのうらにさ たんぽぽがさいてるんだよ。」「あした、みにいくんだ。よしくんもいかない?ちょっとよりみちしない?」この「ちょっとよりみちしない?」がいいなあ。二人のほほは少し赤くなっています。それは、夕日のせいだけじゃないんです。たぶん。

 これって、でも、読むのむずかしいなあ。こんなお話がうまく間を取って読めるようになりたいなあと思わせてくれる絵本です。


2011年8月11日木曜日

RAY OF HOPE


【今日のCD】「RAY OF HOPE」山下達郎

 山下達郎さんの6年ぶりの新作。1月以上前に予約していたので、8月9日に届きました。6年ぶりと言うことで、知っている曲(もうすでに持っている曲)が多い気もしますが、改めて聞くといいものです。タイトルにもあるように、「希望という名の光」が中心的な存在なのでしょう。アカペラを含めて3回出てきます。この間、3月11日の大震災などを受けての構成ということなのでしょうね。達郎さんの願いが前面に押し出されている感じがします。そんな中、「俺の空」なんて曲は面白い。でも、できれば、全作新曲なんていうのも聞いてみたい気もする。

 ボーナストラックとして、【JOY1.5】がついています。これもいい。「JOY2」が実現しそうで楽しみです。PRO TOOLの音源等は違う。厚みと荒さがあり、それはそれで楽しい。30年ほど前に、はじめてLPレコード(多分ムーングロウ)を買ってからのファンですが、そのころはFMでライブを聴くことが多かったので、達郎さんのライブ音源は楽しみです。気長に待ちましょう。待つことには慣れましたから。

 久しぶりにCDを買いました。大滝さんのCDボックス以来です。

 





2011年8月6日土曜日

3つのお願い いちばん大切なもの その1

【今日の本】「3つのお願い いちばん大切なもの」ルシール・クリフトン:著 金原瑞人:訳 あかね書房:刊

 教科書に載っているというので買ってみました。さっと読んでみて、とても面白い内容でした。で、内容について感想を書こうと思ったのですが、内容よりも、登場人物に関心があり、少し調べてみました。以下、ほとんどが引用です。

 一人目「レナ・ホーン」親友のビクターはセノビアをこう呼ぶ。セノビアは、将来ハリウッドに行って、女優になり、映画に出て歌を歌うのが夢である。そのモデルということか?でも、でもである。あえてこの名前を出すには理由があるはず。何でもなしに名前を出すのはおかしい。
 では、どんな人なのか。レナ・ホーンは、1917年6月30日生まれ、昨年(2010年)5月9日になくなっている。女優であり、ジャズシンガーでもある。アフリカ系のアメリカ人ということで、当時の時代背景から限られた役しか演じることができなかったらしく、同時に色白であったことから顔にドーランを塗って出演することのあったらしい。ということもあり、公民権運動にも参加するなど政治意識が高かったようである。その後、ブラックリストに載り、アメリカでの活動が困難となり、フランスに渡り、その後、アメリカに復帰し、活躍したようである。
 作者も、登場人物も黒人ということから、公民権運動に参加する政治意識の高いこの人への興味関心が高かったものと推測できる。いまのところは、これ以上はわからない。とりあえず、レナ・ホーンの曲を聴きたくて、iTunesで検索するとたくさんのヒットしたので、「The Lady and Her Music」をダウンロードした。「Stormy Weather」は聞いたことがあるようだ。

2人目は「ゼノビア」主人公の名前。聖書に出てくると書いている。聖書は苦手。早速調べてみる。
 ゼノビアはパルミラ(現シリア)の王妃、女王で、「戦士なる美の女王」と謳われているらしく、旧約聖書のダニエル書11章の預言に出てくる王の一人でもあるらしい。自信をもってクレオパトラの後裔と称し、また非常に美人であったといわれている。肌は浅黒く、歯は真珠のように光っていたと歴史書には残っているらしい。

 こんな風に調べてみると、作品の背景の一部にふれた気になる。こういうことも、本を読む楽しみの一つであり、教材分析の重要な一部と考えている。何でもいいようで、あえて選んでいるものにはわけがあるはずだから。