あったものは,ルビンシテインの根本思想として有名な次の文
であった。
「外的条件は内的条件を媒介として作用する。」
これは、一定のことばをABCの3人に聞き取らせたとしても、
ABCに同一の聞き取らせ方を生むことはなく、それぞれが違っ
た受け止め方をするというものである。つまり、ことばは、3
人の中を素通りするのではなく、各人に聞き取られるときに、
3人の心をとおって屈折されて受け止められる。受け止められ
方の違いを生むのは3人の心の働きであると。
言ってみれば当たり前のことかも知れないが、当時発達につ
いて学んでいた私にとっては、実に新鮮であったことを覚えて
いる。
そして、ルビンシテインは、この内的諸条件の総体を人格と
して捉えていたのである。
発達論には、生得説、環境説、などがあったが、かれは、外
的要因と内的要因との層が作用が必要であるとし、外的要因の
作用だけでよいとする考えを廃しているのである。たとえば、
優れた教材を準備さえすれば、すべての子供が理解できるかと
いえばそんなことはない。優れた仲間づくりに取り組めば、学
級がまとまるというものでもない。子どもたちの心というプリ
ズムをとおして屈折されることが生じるのである。私が、学生
時代に生活綴方に関心を持ったもの、そんな理由であった。時
々、例えば、算数科などで、こう教えれば、必ずわかるように
なるのだというように発言する先生がいたりするが、そうだろ
うかと思ってしまう。
このあたりが、原点になっているなあと思う。いわゆる軸と
いうものである。
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