2013年7月21日日曜日

ほんとうにいいの?デジタル教科書

【今日の本】「ほんとうにいいの?デジタル教科書」新井紀子:著 岩波書店:刊

2015年までに「デジタル教科書」をすべての小中学校全生徒に配備する。前政権下での原口総務大臣の発言である。すべての生徒にということなのだから、当然教科書に取って代わるものなのだろうか、また、どうして総務大臣なのか、本当に実現するのかなど疑問も多い。そもそも「デジタル教科書」とは、どのようなものなのか?現在学校で購入しているものを指すのか?単に紙をデジタル化したものなのか?このあたりがよくわからない。そんな疑問から、この本を手に取った。印象に残った文から。

 「課題は、文章を論理的に読み取ったり、抽象的な概念を理解したりする部分であり、そこで学力格差が生じている。学力格差が具体と抽象の間の溝を跳び越える能力の差に由来するのだとしたら、アニメーションやドリル型デジタル教材は学力格差を埋める上であまり役に立たない。」
 「もともと読解力の乏しい人や抽象能力に課題がある人がハイパーリンクの存在によって読みを助けられるというケースは想像以上に少ない。」
 「明確な即時のフィードバックが得られることを常として育った場合、結論がすぐに出ない論議や、評価指標(ルール)が見えにくい課題に、違和感を覚えたとしても不思議ではない。あるいは、現在のゲーム機のような強い視覚的・聴覚的刺激に慣れすぎた脳が、文字で書かれた文章の読解や日常的なコミュニケーションから刺激を受けにくくなるというのは妥当な仮説だろう。」
「活用とは、基礎となる知識の仕組みを論理的に言語化して理解した上で初めて築ことができるものだからである。」
「小学生にとって、まず必要なのは、フェイス・トゥ・フェイスの指導のなかで、思考力や判断力の基礎となる学力や、学ぶ方法(ノートの取り方、予習復習の仕方、資料の探し方など)を身につけることだろう。また、先生の話や級友の意見をよく聞き、自分の意見をクラスの中で発表できるようになることだろう。そして、高学年に進むに従って、非言語的な表現を言語化できるように、また、バックグラウンドが異なる人々に自分の考えを伝えることができるようにトレーニングを積んでいく。顔を見たこともなく、言語も異なるインターネットの向こう側の人とコミュニケションするのは、このような基礎ができた上でのことである。」

 これらの意見を参考に活用を考える必要がある。

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