2013年2月11日月曜日

遺体 震災、津波の果てに

【今日の本】「遺体 震災、津波の果てに」石井光太:著 新潮社:刊

 2011年3月11日。釜石を襲った津波は、死者・行方不明者1100人もの犠牲を出した。この本に描かれたのは、各施設を埋め尽くす圧倒的な数の遺体。そして、次々と直面する顔見知りの遺体に立ちすくみながら、人々はどう弔ったのか?「旧二中」を中心とした遺体安置所をめぐる極限状態の記録である
 印象的だったのは、民生委員の千葉さん。そして、葬儀社で働いた経験のある彼の言葉かけである。千葉さんは、こう言います。
 「遺体は人に声をかけられるだけで人間としての尊厳を取りもどす。」
 「遺体は誰からも忘れ去られてしまうのが一番つらい。だからこそ。僕も含めて生きて  いる者は彼らを一人にさせちゃいけない。」
 千葉さんが、「ちょっとつらいだろうけど頑張ってくれな。そうだ、もうちょっとだ。」と語りかけながら死後硬直した身体をさすると、「遺体は言うことを聞くかのように手足を伸ばすのです。
 最後にこんな言葉がありました。「現地にいる身としては、被災地にいる人がこの数え切れないほどの死を認め、血肉化する覚悟を決めない限りそれ(復興)はありえない。復興とは家屋や道路や防波堤を修復して済む話ではない。人間がそこで起きた悲劇を受け入れ、それを一生涯十字架のように背負って生きていく決意を固めてはじめて進むものなのだ」と。覚悟という言葉が重く感じられました。
 手にした本で「17刷」。多くの方々に読まれていることがわかる。この春、映画が公開されるらしい。主演は西田敏行さん。千葉さん役なのだろう。ぴったりである。読んでいて西田さんが思い浮かんだくらいである。楽しみである。

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