2022年8月10日水曜日

告白他

 【今日の3冊?】

「ノブレス オブリージュ 瀬島龍三の大罪」助川俊二:著 編集工房 朔:刊  

 当時の軍部は、ポツダム宣言を受けて、ソ連に米英連合国との和平交渉の仲介役を期待していた。この希望的観測といえる姿勢のために、ヤルタ密約を受けて、ソ連が参戦してくるという情報を握りつぶした。その中心にいたのが、瀬島龍三であるということか。彼がそのことについて語ることなく亡くなっている以上、断定することはできないか。そのとおりだとすると、官僚というものは今も昔も本当のことを語らないものなのだなあと呆れる。情報を握りつぶしたりしなければ、多くの犠牲を払うこともなかっただろうに。腹立たしいかぎりである。


「語らなかった女たち」鈴木政子:著 本の泉社:刊



「告白 岐阜・黒川 満蒙開拓団73年の記録」川 恵美:著 かもがわ出版:刊


 ともに、満蒙開拓移民団や満蒙青少年義勇軍など戦時中に満州にわたった女性たちの悲劇について書いたものです。そして、ともに戦後70年以上経って、今だから話せる、話さなければならないとの思いから出版されたものです(と思います)。

 前者は、聞き取りや調査をもとに書かれたもの、後者は、NHK ETV特集「告白〜満蒙開拓団の女たち〜」の取材班が取材のなかで起きた出来事や番組では伝えきれなかったことなどをまとめられたものです。取材中に、どうして私にその話をしてくれるんですか?」と訪ねたときに。佐藤さんがおっしゃった、「だってあなた、世の中に伝えることができる人でしょう」という言葉が印象的です。その目は凄んでいたそうです。

 戦争は、兵隊と兵隊が戦うだけではなく。多くの市民(女性や子供たち)を犠牲にする。このことをしっかりと語っていく必要を感じます。国を守るため、国民の命と財産を守るため、なんて言葉は綺麗事であり、嘘だということがよく分かる。現在でも同じである。戦争は起こしてはならない。

 ところで、こういう話題を当事者でないものが語るときは、プライバシーについてなど、細心の配慮が必要である。同じような本に「ソ連兵へ差し出された娘たち」という本がある。開高健ノンフィクション賞を受賞した作品であるが、遺族会からの抗議の文章を読んだことがある。本を読む前に、遺族会のモメントを先に読んでしまったので、読もうかどうか迷っているところではある。こういう問題を語るには覚悟が必要であると感じる。ただ事実だからと正義感に燃えて語るだけではいけない。なんのために語ってるのか、自問自答する毎日である。

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