2022年8月6日土曜日

沈黙の四十年

 【今日の1冊】「沈黙の四十年―引き揚げ女性強制中絶の記録」武田繁太郎:著 中央公論社:刊


 作者については、詳しくわかりません。小説家なのだと思うのですが、ノンフィクションも書かれるのでしょうか。他の人達が取り上げないテーマをここまで取り上げておられることは賞賛に値します。なかったことにされても仕方ないこと、そのくらい誰も取り上げなかったテーマだと思います。満州や北朝鮮に居留していた方々の、特に、女性であるがゆえに味わった苦難。それら苦難が隠された事情や社会背景などについて、詳細に書かれています。感想というか?言葉が出ません。


 先日、東海テレビで、「開拓団守るため『性接待』…ソ連兵に差し出された15人の未婚女性「犠牲になれ」封印された75年前の取引」というドキュメンタリーが放送された。戦時中、満州に渡った岐阜県「黒川開拓団」の話である。この黒川開拓団が戦後、侵攻してきたソ連軍の兵士から自分たちの身を守るために未婚の女性をソ連兵に差し出し「性の接待」をさせた話である。

 番組では、犠牲となった女性が出演し、当時の記憶を語っておられました。「性病をもらったりして、お医者さんの先生が、いろいろ手入れしてくださって、注射してもらったり。たくさん亡くなっていきましたけども、おかげで私や今残ってるのが3人。12人が接待に出されて、病気もらって、あとは死んでいったんです。」と証言されていました。2020年に黒川にある佐久良太神社で、満蒙開拓団の慰霊祭が行われたそうです。そこには「乙女の碑」があります。なかったことにされていた事実が70年以上経って明らかになったのでした。

 黒川分村遺族会の藤井宏之会長さんの「自分の親たちがやったことに対して、それが恥じることだということで口に出さないようしてきたということで…。その方が一番恥じるべきじゃないかと…」言われた言葉は大変重い言葉だと思います。

 この女性たちのことを考えれば考えるほど、現在戦闘状態にあるウクライナのことを重ねてしまうのは自分だけでしょうか?

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