2022年9月28日水曜日

哀しい運命の人々 二日市保養所

【今日の1冊】「哀しい運命の人々 二日市保養所」大津誠一郎:著 文芸社:刊

 終戦後、満州や朝鮮北部から命かながら引き揚げてきた人々の中に、現地で乱暴され、心身共に深い傷を負った女性達がいた。引揚げ問題というと、満州からシベリアに抑留された兵隊などの悲劇がクローズアップされるが、ソ連の侵攻によって、朝鮮半島や葫蘆島から引き揚げてきた一般の方々(女性や子どもたち)の悲惨な状況も同じように語り続けることが重要であると思う。

 「堕胎罪」が存在した時代、場合によっては医師免許が剥奪される可能性もあるそんななか、福岡県二日市町に設けられた医療施設「二日市保養所」を舞台に、過酷な運命を背負わされた女性達を救済し、“新たな人生の一歩"へ導くべく日々奮闘した医師、看護婦達の姿を描いた物語である。 

 戦争を起こすのは指導者、支配者という立場の人々であるが、その犠牲になるのは、いつも女性や子どもたちである。戦争が起こるたびに、同じことが繰り返される。だから、戦争は2度と起こしてはならないのである。人類はそう決意したはずなのに、しかし、である。

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