2011年12月25日日曜日

三つのお願い 授業記録1


「三つのお願い(4年国語)」授業記録1

 12月、2学期末の学級にとってとてもお忙しいときに、無理をお願いして、「三つのお願い」の授業をさせていただいた。今年初めてこの教材を知り、読むにつれて、その素敵さに引き込まれていったこと、そして、後でも書くが、日ごろ考えていた夢についての授業があわせてできるかなあと感じたことがその動機であった。今回は、実践記録の第1回目ということで、指導の全般についてまとめてみたい。

1 教材について
 一月一日に自分の生まれた年とおなじ年につくられた一セント玉を拾うと三つのお願いがかなうという言い伝えがある。偶然一セント玉を見つけたゼノビアとビクター。ふたりは仲のいい友達どおし。あまり信じていないゼノビアは、一つ目のお願いを無駄にしてしまう。そして、真剣に考えようというビクターを二つ目のお願いで帰らせてしまう。友達を失ってしまったゼノビアはビクターを呼び戻すために三つ目のお願いを使う。母の言葉から、一番大切なものは友達ということに気づいたのである。
 お願いを三つかなえるという話は多い。その多くは、二つは無駄にしてしまい。三つ目に本当に大切なものに気づくという内容が多い。それは、「もの」ではなくもっと「精神的なもの」、友達や家族の「幸せ」などが多い。
 この作品をとおして、展開のおもしろさや友達のすばらしさなどを読み取らせるとともに、願いや夢についても考えさせたいと考えた。

2 指導について
 本単元のゴールは、感想文を書くことにある。児童は、感想文に対して苦手意識をもっているため、書き方のひな形を示し、それぞれの指導の段階で考えたり、書かせたりしたものをつなぐことで感想文が完成するように計画を立てた。
 一人称で書かれた文章なので、読み取りは比較的容易と考える。三つのお願いを比べて読むことをとおして、友達のすばらしさや本当の願いや夢とはどのようなものかを考えさせたい。そして、それをもとに感想文を書かせたい。

3 初発の感想
 まず、児童に話の内容を予想させ、一文程度の簡単な文章に書かせてみた。文は、「主人公であるゼノビア、または、二人が○○することによって、どうなる」話と言う形で書かせた。さらに、もしもお願いを三つ叶えてもらえるとしたら、どんなお願いをするかを書かせた。
 そして、範読後に、初めの感想を書かせた。三つ目のお願いで二人が仲直りした場面が印象に残ったようで、そのことを書いている児童がほとんどであった。もっとさまざまな場面について書くかと思っていたが意外であった。しかしそのことで、自分のかなえてほしいお願いとゼノビアの三つ目のお願いを比べさせることによって、本当の願いや夢とはどのようなものかを考えさせることにつなげやすくなった。

4  三つのお願いのくらべ読み
 それぞれのお願いついては、お願いの内容とそれがかなったときのゼノビアの見方と読者である児童の見方を比べながら読んで行った。たとえば、一つ目のお願いなら、ゼノビアの見方では、「おや、本当にかなうのかなあ」ということになるが、児童から見れば、「たまたま雲が切れ間から日光がさしただけ」ということになる。

5 ビクターの存在
 しかし、二つ目と三つ目のお願いはどうしてかなったのか。二つ目は、確かに大声で言われたから怒って帰えることはあるでしょうし、三つ目もたまたまビクターも同じ思いだったからタイミングよくかなったといえます。しかし、そのタイミングは絶妙です。もしかすると、ゼノビアの願いをかなえるために、わざとやっているのかと思えるくらいです。そもそもビクター、一セント玉を見つけたときも、先に見つけたのはゼノビアなのに、何だろうと声をかけたのはビクターです。二つは大の仲良し、ビクターはゼノビアの目線を追っており、ゼノビアが何を見て、何を考えているかがすぐにわかってしまうのである。このビクターの存在があってこそ、この話は展開するのである。この二人の関係に是非注目させた。

6 夢とは
 児童に夢について菅あげさせるために、まずワンピースの話を取り上げた。ルフィーの夢は「海賊王」になること。しかし、その「海賊王」とは何か。改めて尋ねられると、児童も戸惑ったようであった。「そうだ、何でもかんでも盗んだりしないしね。」「乱暴でもないし?」ルフィーは、人々の財産を巻き上げたり、むやみに命を奪ったりはしないことをおさえ、そんなルフィーになぜ仲間たちはついていくのかについて考えさせた。
 さらに、渡邉美樹著「14歳からの商い」を紹介し、「自分のためだけの夢はつまらない」こと、人の笑顔や喜びが自分の幸せと考えられるような生き方をすることが大切であること、そのために今何をするかを考えることが大切であることについて考えさせた。
 その上で、最初に書いたかなえてほしい願い事や夢を読み返し、再度、将来の夢について考えさせた。さらに、その夢でまわりの人を喜ばせたり、感動させたりしている場面を具体的にかかせた。世の中のため、まわりの人の役に立つ夢に変わった児童もいれば、夢は変わらないが、目的が変わったり明確になった児童もいた。

7 振り返り
 夢を再度考えさせることをとおして、自分の夢に対する考え方がはっきりした、変わったという児童も少なくなかった。なによりも、夢について考え直し、再度夢について考えているとき、多くの児童が集中して真剣に感想文を書いていたことが印象的であった。自分の夢がはっきりした、夢が変わったという感想も見られ、大変うれしかった。この夢もまたいつか変わると思う。でも、その時も、今回のように真剣に考えてくれたらありがたい。そうやって、つねに夢を持ち続けてほしいと願っている。

8 お礼
これは、絵本版の表紙です。
同じ作者なのに、ゼノビアの顔、
こんなにちがいます。
最後に、こんなわがままな実践を許してくれた担任の先生と児童のみんなに感謝します。児童にとっては、どうして担任の先生が授業しないのかなどと疑問もあったことと思うが、まるで関係ないように普通につきあってくれた。担任の先生のフォローあってのことと思うが、改めて先生や児童のみなさんに感謝します。本当にありがとうございました。実は、当初数時間だけの約束だったのですが、やりだしたら切りがつけられなくなり、最後まで授業をとってしまいました。しかし、最後の感想文の仕上げについては、学期末の忙しいときに、担任の先生にお手数をかけてしまいました。申し訳ありませんでした。何度の言いますが、夢を書いているときの児童の真剣な様子が忘れられません。
 次回は、実際に児童が書いた感想文をもとに授業の分析を行いたいと思います。いつになるかわかりませんが。

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