2017年4月11日火曜日

屋根裏の絵本かき

【今日の本】「屋根うらの絵本かき」ちばてつや:著 新日本出版社:刊
 あしたのジョーやキャプテンなどで知られるちばてつやさんの自伝。満州からの引き揚げ者といての有名で、戦争体験やデビューの経緯などの裏話などが書かれており、とても興味深い内容です。満州での敗戦時の混乱の中、奇跡とも言える優しい中国人との出会いがあり、かくまわれた屋根裏での体験がちばさんのマンガ家としての下地をつくったわけで、この中国人との出会いがなければ、ちばさんの今日もなかったかも知れない。赤塚不二夫さんも同じような体験の持ち主である。このあたりの情報は、舞鶴の引き揚げ記念館が詳しい。大変な時代であり、同じような体験をした方はたくさんおられ、亡くなった方、逃げるために子どもを中国人に預けた方など。また、ちばさんを助けた中国人、この人はもともとお父さんの会社で働いていたのですが、のちに文化大革命の時に、日本人に協力したとして当局に問い詰められている。戦争というものが双方につらい影を落としている。今、多くの方に読んでほしい本です。
 最後に、表現の自由について。誰からの規制されない自由の中で自由に表現されたものの中から、読者が読者の好みによって自由に選択すべきであると書かれたいる。セックスとか暴力だけの内容のない作品ははじめは興味を持たれても、いずれはあきられて自然淘汰されていくと信じる。絶対に法律等で規制すべきでないと強く主張されている。第2次世界大戦時の軍部による検閲と重なるとの指摘。その時代を生きたちばさんらしい主張であり、今回の出版の意図もそのあたりにあるのかも。

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