2021年3月8日月曜日

対話の教育への誘い

 【今日の1冊】

「対話の教育への誘い」坂元忠芳:著 新日本出版社:刊

 退職にともない書籍を大量に処分してきましたが、まだまだ残しておきたいと思う本もあります。と言っていても、いずれは処分しなければならないので、そんな書籍についても、再度読み直して、要点を残しておこうと考えました。

 今回は、坂元忠芳先生の「対話の教育への誘い」です。1991年7月初版です。坂元先生はとても尊敬している先生で、その著書はほぼ読んでいると思います。(ここ10年くらいは怪しいですが。)


 今回、改めて読み返してみて、「30年前のものとは思えない」、「今こそ読むべき内容」、「その視点は色あせない」というような感想を持ちました。その中から、「子供をつかむ」ということについて書かれた内容を要約して書き留めます。


 「子供をつかむ」とは?このことには2つの側面がある。

 第一は、「子供の中に情勢をとらえるということ」です。これは、刻々に変化する情勢が子供の実生活と学校の教育の中に、また、とりわけ、子供の内面にどのように表れているかを、子供の変わらぬ状況とともにリアルに捉えるということです。

 第二に、「社会を変革する立場から、子供の中に、人間的な能力と人格の発展の萌芽をつかみ、子供自身が自分の力で、それを切り開いていけるような教育の内容と方法を見つける」ということです。

 「子供をつかむ」ということは、子供の社会的な状況をありのままにつかむとともに、未来を見通しながら、子供自身が人間的に自分自身と自己の周りを変えていこうとする、そのきっかけをつかむということです。

 このあたりの考え方は、坂元先生の一貫した考え方のように思います。そのためにまず、子供がどんな問題を抱えて、どのように生活しているかということをまず把握することが大事であると述べられます。

 また、当時の学校の状況についても以下のように述べておられます。

 今日の学校の敵対的競争と管理主義が、人格の否定的感覚を非常に早くから作り出している。私たちはあまりに子供をやらせることに慣れ管理することに慣れてしまって子供たちの奥深い人間的渇望を取り逃してしまっているのでのではないでしょうか。そして、その結果として、何事に対しても引っかからないで、周りを気にしながら、上からの支配に素直に従っていくような従順で面白くない子供、そして敵対的競争に巻き込まれていく子供を作っていこうとしているのではないでしょうか。

 このあたりの指摘は、まさに今も変わっていないと思われます。そのうえで、子供たちにとって、安心して生活し、安心して学習できる子供同士の関係の中で育てることの重要性を指摘されます。まさしく、安全・安心がキーワードといえるでしょう。

 そのためには、まずは子供の話をじっくり聞くことから始めることを提案されます。各人の自由を束縛する共同ではなくて、自由を最大限に認めながら、共に生きていく共同の文化を作っていくことであると思います。共に仕事をすると言う意味を持つ共同の世界も、このような自由を作り出す制度の構想の中に位置づける必要があると。

 さらに、大人の側からする子供の権利の保障ではなく、子供の側から子供自身の権利を作っていく発想が何よりも重要になってきている。このような対話の重要性はいっそう明らかであると。

 最後に、以下の部分も気に入りました。
 ・脅迫的な部分を捨てて、安心して勉強できること
 ・わからないものがわかるものに聞ける時間を保障すること。
 ・生徒一人一人それぞれのレベルに応じた活動をしやすくすること。
 ・私と一人一人がおしゃべりをしやすくすること。

 まさしく、今の教室に必要なことと思います。30年前の本ですが、自分にとってはバイブルのような本です。捨てるのがもったいなく思えてきました。

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