2020年9月28日月曜日

村日記

 【今日の1冊】「村日記」岡林信康:著 講談社:刊

 突然、第一線を退いて綾部市栃村に移り住み、村で米づくりなどに挑戦した岡林さんの4年間を綴った本です。岡林さんが綾部の栃村にいたのは、1972年から76年まで。それは、精神的にボロボロになった岡林さんが自然とかかわることをとおして、少しずつ本来の自分を取り戻し、もう一度、歌を生涯の仕事として真面目に取り組みたいと思うまでに回復した4年間であったのだろう。この間に、アルバムを3枚制作しています。「金色のライオン」、「誰ぞこの子に愛の手を」、「うつし絵」。私の好きな「26ばんめの秋」は「金色のライオン」に入っている。また、「うつし絵」には、綾部でのできごとや思いを歌った「橋〜”実録” 仁義なき寄合い〜」や「村日記」などが入っている。「橋〜”実録” 仁義なき寄合い〜」の歌詞を紹介します。


「橋〜”実録” 仁義なき寄合い〜」


寄合いの席で 区長さん
聞いておくれ  皆の衆
村のあの橋ゃ もう駄目だ
怖くて通せぬ 耕転機
そこでお上に願うたら
村でもなんぼか 銭出せと
こういう話じゃ なんとしょう
銭は惜しいし 命も惜しい
何でないかえ よい思案

万次郎さんが 乗り出して
聞いておくれよ 皆の衆
台風なんぞ の災害で
橋がポキリと いったときゃ
お上が全額 持つそうな
そこでどうじゃろ 大水が
出た時みんなで のこぎりを
持ち出し橋げた 切ったらば
きっとゆくゆく うまくゆく

煙草ふかしで 岩太郎さん
それはまずいぞ 皆の衆
それそれ隣の あの村じゃ
去年の大水 出た時に
区長が号令 かけたので
みんながのこぎり もち出して
橋げたギコギコやったのが
お上にばれて 大騒ぎ
やばい橋なで 渡れんぞい

それまで寝てた 長さんが
むっくり起きて 皆の衆
どうじゃろ冬の 雪かきに
かいた雪をば  橋の上
みんなで捨てたら よかろうが
ひと冬せっせと 村中の雪を
集めりゃかなり 重いもの
そうすりゃ必ず ポッキリと
落ちて流れて うまくゆく


みんなが賛成 しかけたら
綱ちゃんひとり 青い顔

待っておくれよ 皆の衆
俺らの家は 川向こう
雪で橋をば ふさがれりゃ
家の出はいり 何とする
おまけにそれで あの橋が
落ちりゃええけど 落ちぬ時は
俺らひとりが 馬鹿をみる

そんなわけで あれこれと
真面目な意見は 出たけれど
なかなか思案は 纏まらず
橋は流れず お話は
下の方へと 流れてく
あそこの後家はん だれそれと
ああでもこうでも 何でもない
そのうちみんなで 酒を呑み
歌をうたって サヨウナラ

 このレコードが出てしばらくしたころに、岡林さんは「この一曲分の印税を村に寄付します」と酔った勢いで宣言してしまいます。ところば、村の人たちは、レコード全体の印税を寄付してもらえると勘違いして市に陳情してしまったそうです。莫大な請求が来たらどうしようとヒヤヒヤしていたそうですが、結局はたいした額にはならなかったそうです。おもしろい話です。そういえば、LP「うつし絵」のジャケットに写っているのが、その橋なのでしょうか。完成の前?後?見た感じでは完成前のようです。そこに写っているおばあさんの笑顔が印象的です。村の人は大変感謝したのでしょうね。そんなエピソードがたっぷりの本でのあります。

うつし絵(紙ジャケット仕様)

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