2012年1月19日木曜日

三つのお願い 授業記録3

【三つのお願い 授業記録3】感想文から

夢について書くに当たって、夢は自分のためだけのものじゃつまらないこと、そして、夢が誰かを幸せにするものなら、具体的に誰をどのように喜ばせるのかを想像して書くことをもとめました。たとえば、10年後、夢がかなった場面を想像して書くということです。これには、子どもたちは興味をもったのか、ととえも意欲的に取り組んでいたようでした。子どもたちの感想を紹介します。

1 夢が変わった!夢の理由が変わった!
・動物園をつくって、子どもたちに「ありがとう」を  言ってもらう。
・お父さんやお母さんを旅行に連れて行って、喜んでも らいたい、喜ぶ顔を見たい。
・やはり、それは、魔法使いになることです。でも、理由は変わりました。その理由は、 魔法使いになって、いろいろな人のお願いをかなえたり、自分や家族の夢をかなえたり したいからです。例えば、足の病気で苦しんでいる人に、足の病気が治るようにお願い をかなえてあげて、走ったり、遊んだりできるようにしてあげたいです。足の病気を治 してもらえた子は、足の病気が治って喜んでいると思います。
・そこで、もう一度、将来の夢について考えました。わたしの一番の夢は、トリマーにな ることです。この夢は、たぶん二年生のころから変わっていません。わたしは、二年生 のときに、ペットショップにくるみを買いにいったとき、トリマーという仕事があるこ とを知りました。そのとき、トリマーさんは、「かい主さんを喜ばせたい。」と言って いました。わたしは、そのトリマーさんの言葉を聞いて、トリマーになりたいと思いま した。
・みんなぼくのことを子どもたちが見て、この人すごいなあと思って、野球が好きになっ て、プロ野球選手になって、かつやくしてもらいたいです。
・家に帰って、次の日に、青郷小学校のグラウンドに行ったら、子どもたちが野球をして いました。そして、ぼくは、しばらくしてコーチになりました。ぼくは、ヒットを打っ たことのない子のところへ行き、その子にバットスイングの仕方とか、ボールをよく見 るようにと教えました。その子が、ぼくに「コーチ、ありがとう。」と言ってくれたの で、とてもうれしくなりました。
・プロ野球選手になって、キャッチャーになって、かつやくして、かんとくを喜ばして、 有名になりたいです。そのためには、今、野球の練習を真けんにしています。
・そして、本当にうく車が発売されました。その車はいっぱい売れました。この車を買っ た人は、すごく楽になって、喜んでくれて、ぼくに「ありがとう。」って言ってくれま した。ぼくは、うれしい気持ちになったり、買った人の笑顔が見られてよかったという 気持ちになったりしました。

→ 考えてみて夢が変わった子、夢は同じでもみんなの笑顔につながるような夢に変
  わった子がたくさんいました。プロ野球の選手をめざす子たちは、最初はお金もうけ  をして・・・・という夢でしたが、コーチになって、打てない子の指導をするなどに  変わっています。「『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメン  ト』を読んだら』」を思い出してしまいました??「マネージャーの資質は、才能で  はなく、真摯さである。」子どもたちはまじめに、誠実に考えていたように思いまし  た。(少し大げさか?ふと、思い出したので。)



2 震災や津波について考えた! 
・それは、ファッションデザイナーになることです。中略。まだ、わたしが大人になって もしんさいで悲しんでいる人がいるのなら、服でその悲しいことを全部とは言わないけ どわすれて、笑ってほしいです。そして、がんばってほしいです。
・タイムマシーンで未来に行きました。そして、三十二年五月十日ごろ、大地しんがおこ るということが分かりました。急いで、今の時代にもどって友達に言った・・・。

→ 3.11大震災をうけて、大震災のことが頭から離れない子どもたちは、作文の中にこん  なことを書いてくれました。子どもたちは子どもたちなりにいろんなことを考えてい  るんだなあと感じ、うれしくなりました。



3 夢についての考えが変わった!
・物語を読んで、ぼくは、自分のためだけの夢じゃなくて、みんなのための夢をした方が よいということがわかりました。
・しかし、このお話を読んで、お願いや夢は、自分のことだけじゃなくて、みんなのため にあるものだということが分かりました。そこでもう一度、将来の夢について考えまし た。
・今までをふり返ると、自分だけの夢はつまらないんだなあと思いました。だから、これ からは、友達、家族なども喜ぶ夢、願い、そして、その人たちを大切にしたいです。
・わたしは、読む前と読んだ後で自分の考えは変わりました。読む前は、大金持ちになる ということだったけど、あの「三つのお願い」を読んで、自分はみんなのために役に立 ちたくて、こんなにみんなの笑顔が見たかったんだなあと思って、びっくりしました。 どうしても、この夢をかなえたいからがんばりたいです。そして、物語を読んでまた夢 について考えてみて、自分の考え方はみんなのためにということが自分の中にあったと 思います。私の考え方はあっている、自分を信じてやっていきたいです。大金持ちにな りたいと思うのもいいけれど、将来のことを考えて、そしてみんなの幸せのためにがん ばって見るのもいいなあと思いました。
・読む前のわたしは、夢は自分のためだと思っていたけど、具体的に考えてみると、たく さんの人を幸せにできるんだと思いました。わたしは、夢についてまた考えて、初め考 えたときは、自分のレストランを開いて、大金持ちになるんだと思っていたけど、本当 に本当に考えてみて、やっぱり大金持ちにならなくても店を開くことができて、たくさ んの人がやって来てくれたら、幸せなんだなと思いました。この夢をかなえるために、 これからも料理の練習をしたいです。
・このお話を読む前は、自分だけの夢だけかなえたらいいと思っていたけれど、読んだ後 は、自分とみんなの夢をかなえたいと思うようになりました。理由は、ぼくの夢だけが かなっても、みんなの夢がかなわなかったら意味がないので、ぼくの夢がかなったら、 みんなの夢もかなえたいと思ったからです。
・ぼくは、夢について考えて、最初は、自分だけのための夢だったけど、みんなのための 夢に変わりました。
・この話を読む前は、夢なんてかなうわけないと思っていたけれど、読んでみると、本当 に夢がかなって、すごいと思いました。最初は、足がはやくなりたいと思ったけど、考 えてみたら、みんなが喜ぶ夢の方がいいと思うようになりました。
・夢について考えて、自分の考え方が少し変わりました。夢はいろいろあるけど、その一 つを選んで、将来の自分を予想するのは、むずかしかったです。でも、このお話を読ん で、自分の夢を考えるのはかんたんになったと思いました。
・物語を読んで、また、夢について考えて、自分の考え方が変わったかというと、いろい ろな人がいるし、個性もあるし、みんなちがうし、だから、考え方もちがうし、だか  ら、自分のためだけに使う人もいれば、ほかの人のために使う人もいることがわかりま した。そこが考え方の変わったところかなあと思うところです。

→ もちろん教師の指導があることは前提です。多少は、いやかなりの部分で考え方   に影響を与えていると思います。でも、子どもたちは真剣に考え、こう思っているの  だと思います。作文を書いている姿からそう感じました。自己満足かも知れません   が。実際、教師の指導といっても、渡邉美樹氏の著書の1ページを読んだことと、ル  フィーの夢について話しただけですから。やはり、子どもたちが素晴らしい。


4 友だちについて考えた!
・わたしは、この話を読む前は、友達がそんなに大事じゃないと思っていたけど、読んだ 後はとても大事だと思いました。これからも、友達を大切にしたいです。

・それから十ヵ月後。店にはだれも来なくなりました。そこに、一人の友達がやってきま す。来てくれたお礼に、たくさんのごちそうを作り、久しぶりに話もしました。
友達が帰るころ、友達は、「おいしかったよ。最高だったよ。」と言ってくれました。 わたしも、「わたしもだよ。来てくれてありがとう。」と言いました。とてもうれしく て、友達が帰ってからも、心があたたかいままでした。

・私が二十才になると、前からお母さんに言っていた、「自分のレストランを開きたい」 という夢がかないました。開店の日にわたしは、昔、仲が良かったクラスのみんなをよ んで第一号のお客さんになってもらい、楽しくすごしました。つぎの日は、全然お客さ んが来ませんでした。でも、クラスのみんながチラシを配ってくれていて、その後は大 はんじょう!お母さんにも手伝ってもらいました。一人で料理をしていてもおもしろく なかったけど、お母さんが手伝ってくれてから、とっても楽しくなりました。お母さん は、いつもニコニコ楽しそうでした。そして、アルバイトをぼしゅうすると、五人入っ てきました。その子達は、明るく元気で店の中はいつも明るく、楽しかったです。そし て、悲しそうに店の中に入ってくるお客さんも、そのふんい気に最後はニコニコ顔に  なって帰っていきます。来たお客さんは、みんな、「ありがとう!また来るね!」
と言って帰ってくれます。その後、店は全国に何てんぽも建ち、大はんじょうしまし  た。

 → 子どもたちの作文には、たくさんの友だちが登場しました。上の感想文では、夢が  破れそうになったとき、友だちが助けてくれる内容です。こんな風に考えられるこ   と、このことが素晴らしいと感じます。心温まる内容です。こんなふうにみんなのこ  とを思っているんだよということがわかれば、きっといいクラスになると思いま    す。このほかにも、いくつもあります。作文を読み合ったわけではありませんが、な  んとなく気になって、互いの夢を紹介し合っていたのでしょう。今回はできませんで  したが、本当はこの感想文を発表するとよかったと思っています。このあたりは、発  表したくないという子どももいることから、担任の先生も躊躇しているのですが、学  級の実態を考えると、必要なことに思えます。何点か、発表してもいい子だけでもい  いので、やってほしいと思います。もう少し後押ししてみるかなあ。

5 まとめ
  子どもたちの書いた感想文をワープロで打ち出し、製本して文集にしました。(子ど もには配付していませんが。)ただ、今回の実践での反省点は、感想を書かすことがで きなかった児童が1名いたことです。残念ですが、力及ばずというところでした。これ は、今後の課題として、しっかりとおさえておきたいと思います。
  さて、私たちは、教えることを仕事としています。この「三つのお願い」は国語です から、当然国語の学習内容があります。目標、ねらい、評価規準といったものが必ずつ きまといます。しかし、授業で教えるものは、そうした表のカリキュラムだけではあり ません。
  物語の内容を押さえるだけでなく、そのことをつうじて、何か認識を深めたり、考  え方を広げたりということにも取り組みたいといつも思っています。今回の場合は、  夢とは何かについても考えさせたいと思い、感想文に取り組みました。ある子はこん  な風に書いています。「読む前は、大金持ちになるということだったけど、あの「三  つのお願い」を読んで、自分はみんなのために役に立ちたくて、こんなにみんなの笑  顔が見たかったんだなあと思って、びっくりしました。」自分の本当の思いに気づ   き、それに驚いています。こんな風に子どもたちの心を揺さぶることができたら最高  です。このような感想があると、
  フランスの詩人ルイ・アラゴンは、「教えるとは希望を 語ること。学ぶとは誠実を胸に刻むこと。」といっていま す。子どもたちの前では真摯になりたい。教室で、夢や希 望を語れるようになりたい。そう思って教師になって30 年近くになりますが、今回 久々に授業をしてみて、こん な言葉を思い出しました。といっても、普段は怒ってばか りで反省ばかりの今日この頃ですが。さらにいうと、この ように授業について真面目に、真剣に話すことが本当に少 なくなったと感じています。ただ幸いなことに、私のむず かしい、わけのわからない話につきあってくれる人がひとりだけでもいることを幸いに 感じています(本当は、いやがっているのかも知れませんが?なら、ごめんなさい)。 そことは真面目な話ができるという感じかなあ。大切です。改めて、ご協力ありがとう ございました。

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