2020年8月19日水曜日

ケーキの切れない非行少年たち

【今日の本】
「ケーキの切れない非行少年たち」宮口浩治:著 新潮新書:刊


 以前から気になっていた本なのですが、やっと読み終えました。一言で言うと、大変参考になりました。少年犯罪を犯した子供たちと深くかかわってこられた専門家の経験や意見から、たくさんのことを学ばせていただきました。
 多くの非行少年たちが「反省以前の問題」を抱えていること。簡単な足し算や引き算ができない、漢字が読めない、簡単な図形が写せない、短い文章すら復唱できないなどの子供たちが「厄介な子」として扱われるだけで支援を受けていないということ。「ほめる教育」だけではこの子たちを救えないことなど、現在の学校が抱えている課題そのものでした。氏は、非行少年に共通する特徴として、以下のようにまとめておられますが、思いつくことがたくさんあります。
 ①認知機能の弱さ…見たり聞いたり想像する力。
 ②感情制御の弱さ…感情をコントロールするのが苦手。
 ③融通の利かなさ…何でも思いつきでやってしまう。
 ④不適切な自己評価…自分の問題点がわからない。
 ⑤対人スキルの乏しさ…人とのコミュニケーションが苦手。
 ⑥身体的不器用さ…力加減ができない。身体の使い方が不器用。

 また、こういった子供が気づかれない理由として、知的障害の定義があると指摘されます。現在、知的障害は、一般的にIQ70未満で診断がつきますが、1950年代の一時期には、IQ85未満とする時期があったそうです。したがって、IQ70〜84は、現在では「境界知能」といわれる範囲になりますが、そうすると、全体の16%程度が知的障害となり、あまりに多すぎるので、70未満に下げられたそうです。基準が変わっても、事実が変わることはないので、この「境界知能」の子供たちは依然と存在しているのということです。35人の学級では、5名程度の子供がかつての定義からすると知的障害に相当していて、さまざまなサインを出している可能性があるということです。つまり、「困っている」ということになり、これらの子供たちへの支援や対応が必要とされています。
 では、そうすればいいかということで、「コグトレ」の実践が紹介されています。コグトレについては、さらに関連図書を購入したので読み深めたいと思います。
 「教室で『困っている子ども』を支える7つの手がかり」
 「教室で使えるコグトレ」
 「不器用な子どもたちへの認知作業トレーニング」

 本の内容とは直接には関係ない感想かも知れませんが、教科のカリキュラムなどは整っていますが、例えば、多くの先生方が重要だといっている「コミュニケション能力」などに関するカリキュラムはほとんど整備されていないのが現状だと思います。必要と感じて短期間は取り組むのですが、地道に力をつけていくことにはつながっていない気がします。そういう点からも、この「コグトレ」も参考にしたいと思いました。

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