2020年4月14日火曜日

矢川徳光さんの本から No.2

 矢川さんの紹介された文章で、もっとも印象的で、衝撃的で
あったものは,ルビンシテインの根本思想として有名な次の文
であった。

 「外的条件は内的条件を媒介として作用する

 これは、一定のことばをABCの3人に聞き取らせたとしても、
ABCに同一の聞き取らせ方を生むことはなく、それぞれが違っ
た受け止め方をするというものである。つまり、ことばは、3
人の中を素通りするのではなく、各人に聞き取られるときに、
3人の心をとおって屈折されて受け止められる。受け止められ
方の違いを生むのは3人の心の働きであると。
 言ってみれば当たり前のことかも知れないが、当時発達につ
いて学んでいた私にとっては、実に新鮮であったことを覚えて
いる。
 そして、ルビンシテインは、この内的諸条件の総体を人格と
して捉えていたのである。
 発達論には、生得説、環境説、などがあったが、かれは、外
的要因と内的要因との層が作用が必要であるとし、外的要因の
作用だけでよいとする考えを廃しているのである。たとえば、
優れた教材を準備さえすれば、すべての子供が理解できるかと
いえばそんなことはない。優れた仲間づくりに取り組めば、学
級がまとまるというものでもない。子どもたちの心というプリ
ズムをとおして屈折されることが生じるのである。私が、学生
時代に生活綴方に関心を持ったもの、そんな理由であった。時
々、例えば、算数科などで、こう教えれば、必ずわかるように
なるのだというように発言する先生がいたりするが、そうだろ
うかと思ってしまう。
 このあたりが、原点になっているなあと思う。いわゆる軸と
いうものである。


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